約 1,893,777 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1987.html
森の中にうつ伏せて倒れていた男は、死の寸前に見えた。 たくましくも美しい筋肉を外気にさらし、奇妙で複雑な刺青の刻まれた背中は焼け焦げている。 足元から落雷にあったかのように下半身に行くほど酷くなる火傷のせいで、足先など完全に炭化している様子だった。 かすかに息があるのか時折ビクリと震えるが、奇跡でもおきない限り男の死は避け得ぬ事だろう。 だが、いずこに居るとも知れぬ神は彼を見捨てなかった。 そも、此処で倒れている事自体、彼が有り得ぬ奇跡によって救われたとも言えるのだから。 赤と青の月が照らす森の中。 倒れた男に気付く、流れるような金髪の少女の姿。 普段は夜の森を歩く事など無い少女だった。 野党こそそう現われはしないが、夜行性で人を襲うような獣は少ないが生息しているのだから。 だが、まだ肌寒い早春の月夜にだけ開花する珍しい花を見るために、今夜だけは子供達と共に散策していた事が結果として死に掛けていた男を救ったのである。 「大変!」 悲鳴のように叫んで男へと駆け寄る少女。 その耳は、人では無い者の証とでも言うように長く尖った形状をしていた。 【虚無の使い魔と煉獄の虚神】 「どうかお待ち下さい、『神の如き』グレン殿!」 レコン・キスタ討伐へ赴こうとしたグレンを止めたのは、アルビオン王党派貴族達だ。 皇太子を暗殺され、老王は最初の突撃で戦死した。 死地と知ってなお王家に従った忠臣達は、従うべき旗を失ったのだ。 だから死に場所をこそ、彼等は求める。 「最早王家の再興はならず、我等に仕えるべき君主も無し。 かくなる上は、せめてあの逆賊どもに一矢なりとも報い、真のアルビオン貴族ここに有りと、我等の怒りを怨敵に知らしめ、後世に伝えられるように誇り高く討ち死にする事だけが我等の望み。 御身がやつばらに神罰を下されるは、その後にお願いしとうございます。さすれば我等、なんの憂いも無く戦場を駆ける事が出来ましょう」 王家以外には下げぬと決めていたであろう頭を下げて平伏し、生き残りの王党派貴族247人がグレンに懇願したのだ。 アルビオンの敵と戦うのは、まずアルビオン貴族の自分達の役目である。 正論だ。 誇りや忠義のために命を賭けるのが貴族というものだ。 道理であろう。 だが、そんなものは自殺と同じにしかサイトには思えなかった。 「なんとか止められねぇのかよ、グレン・アザレイ! あんたは神様みたいなモンなんだろう!? だったら、あの人達が無茶する前に敵をやっつけて来りゃあイイじゃないか!」 戦死者の葬儀で慌しいニューカッスル城の一室で、サイトは怒鳴った。 この期に及んで本を読んでいるタバサとグレンが居た、城の資料庫の中だ。 「戦場とは人が死ぬ場所だ、少年。 それ以前に、わたしがレコン・キスタの者達を殺すことも、王党派がレコン・キスタの将兵を殺すことも、あるいはレコン・キスタが彼等を殺すことすら、本質的になにも違いはせぬ。 わたしは『神に近き者』と呼ばれるが、それを求めても未だ至ってはいないのだから。 ならば彼等自身が矜持ゆえに戦場に倒れる事を選んだ以上、止める理はわたしには無い」 グレンは静かに、王党派が戦場に出る前にレコン・キスタをグレンが滅ぼす無意味さを説く。 グレンとて神ではなく人間だ。その手が殺戮を行うのは、神意ではなく人間グレンの意志でしかない。 この太陽の如き英雄は、自分が大量虐殺者である事を揺るがずに見据えていた。 殺す事に無自覚なほど鈍感でも、殺す事に馴れるほど乾いているのではない。 意思の力で、心の揺れを完全にねじ伏せられる人間だからこそ、この男をして人は『神に近き者』と呼ぶのである。 その傍らに立つ雪風の娘もまた、人が人を殺す罪を震える事無く受け止める人間だ。 自分の使い魔が5万の人間を皆殺しにした戦いを、タバサはただ静かに飲み込む。 二人に向かい合うサイトは、彼等とは真逆の存在だった。 心を震わせ、怒りを燃やし、情に揺られる事で力を発揮するガンダールヴ。 サイトにとって、グレンの正しさは絶対に認められない正しさだ。 「もういい! アンタには頼まねえ!」 叫んで、サイトは資料室を飛び出した。 行く先はルイズ達が与えられた部屋。彼女達なら、なにか知恵を貸してくれると信じて。 ―――ミス・ロングビルは元アルビオン貴族である。 とは言っても、とある事件が原因で名誉も家名も王家によって奪われた人間だ。 アルビオン貴族が藁束のように死のうとも、気にする義理は無い。 それでも、大勢の人間が自分から死にに行く馬鹿な行為を平然と見ていられるほど、無感動になれるワケでは無かった。 いや、少し前までは乾き切っていたはずの心に、人間らしさが戻っていたと言うべきか。 それはルイズの誇りが、キュルケとの友情が、もたらした変化だった。 だからつい、サイトに言ってしまったのだ。 「まぁ、方法がまったく無いわけではありませんが……」 「本当かフー痛てっ……じゃなくて、ロングビルさん」 うかつな伝説の使い魔をポカリと叩くメガネの才女。 この場には事情を知るルイズとキュルケだけでなく、ギーシュも同席している。 「要するに、あの方達は王家が断絶しているから生きる望みを失っているのでしょう? でしたら、正しく王家の血を引く誰かを連れて来れば良いのではありません?」 「この国じゃそんなの、そうポンポン転がってるワケないでしょう?」 「ポンポンって……まぁ確かにミス・ツェルプストーの言うとおりだね。 我がトリステインのアンリエッタ王女殿下ならアルビオン王家とは従姉筋だが、まさかトリステインの王女様や女王様を連れて来るワケにはいかない。 それ以外となると……継承争いやら反乱軍による処刑やらなにやらも有って、なかなか王家に近い血筋のやんごとない御方というのは居ないんじゃないのかな?」 「そう言えば何年か前にアルビオン王弟が粛清されたってウワサも聞いたわね。 ガリア王弟もそうらしいし、我がゲルマニアの皇帝陛下も継承争いで親族を幽閉しちゃってるし、王家ってけっこう血なまぐさいわよね、実際」 その継承争いで父を謀殺された王族も身近に居るのだが、今のところキュルケ達は知らない。 ルイズなどは公爵であるので系譜を辿ればトリステイン王家にたどり着くのだが、血筋が遠すぎるので当然ながら王位継承権などは持っていない。 ともかく、アルビオンの玉座にふさわしい血筋など、そうそう連れて来る事はできないはずだ。 「一応、心当たりがありますから。と、言っても色々ワケ有りな娘ですし、簡単にあの死にたがっている人達を説得出来るとは思いませんけど…… とりあえず貴方達だけにご紹介しますから、実際逢いに行ってみますか?」 そう言ったのはほとんど気の迷いと、もしも『あの子』が玉座についてアルビオン貴族が平伏したら、さぞ痛快だろうという皮肉な気持ちからだった。 だから、あまり本気で連れて行くつもりは元々ミス・ロングビルには無かったのだ。 どの道ニューカッスル城から目的地であるウエストウット村まで、普通に行って帰るだけで葬儀も終わって王党派の貴族達も出陣してしまうだろうし、ましてや村までの道程もレコン・キスタの勢力が押さえている今、竜騎士の一騎も居ないのに、現実問題として行けるワケが無いのだ。 ただサイトがあまりに必死で懇願するから、ほだされてポロッと言ってしまったと言う方が近い。 ……なのに、気がついたらウエストウッドの森の中に自分達は立っていた。 灰色の壁、二つの壁という『相似』の空間を造る事で二点を強制的に連結するグレンの魔術。 使い魔召喚のゲートにも良く似たこの門を通って、一行は目的地まで一瞬で来ていた。 「うかつ。転移魔法を使うって事すっかり忘れてたわ」 思わず『フーケ』のものになった口調でぼやく。 かくのごとく人は、自分の常識外の事には意外と注意がおろそかになるものである。 「送ってもらったのは良いのですけど、ミスタ・アザレイとミス・タバサは用事があるとかで城に残られて、私達の帰りはどうなさるおつもりですの?」 「あの扉は相似魔導師が消すか魔法消去を受けない限り、ずっと存在し続けるってタバサが言ってたわよ」 「はぁ……ミスタ・アザレイ以外の人にも相似魔術というのが使えれば、ハルケギニアの交通に革命がおきますわね」 事実、相似世界の交通もグレン自身が発明したこの転送扉の普及によって革命的に変化したとは知らず、キュルケの答えを聞いてミス・ロングビルはそんな感想を洩らした。 「そんならすぐにコレが見えない所まで離れないとな」 抜き身のデルフを手に、何処か不機嫌そうなサイトが、言って森の中を歩き出す。 本当はグレンの力など借りたくなかったのだが、ここまで来るのに力を借りるしか無かった自分の不甲斐無さに腹を立てているのだ。 そんな風に、不満を誤魔化すように獣道同然の道をどんどん進むサイトを、ギーシュの手前ミス・ロングビル口調を保つフーケが引きとめた。 「そちらではなくて、村があるのは東の方ですわ」 「ああん、ダーリンったら、あわてんぼさん♪」 バツが悪そうに引き返してきたサイトの腕にキュルケの腕と胸が絡み付く。 もにゅん! とした感触に、不機嫌も吹き飛んでサイトの鼻の下が10サントばかり伸びた。 普通ならここでルイズの眉の間が2サントばかり縮み、怒りの声の一つも出るはずの場面。 だがルイズは沈黙したままだった。 しょぼんと下を向いて、心ここにあらずといった風情である。 思えば城から出る前からこんな調子で一言も発言していない。 婚約者に裏切られたばかりなのだから仕方ないと思いつつ、なんだか張り合いが無いキュルケ。 サイトもおっぱいの感触は感触として、真面目な顔になって心配そうにルイズの様子をうかがった。 「さあ諸君、高貴な方を迎えにゆくのだ! 胸を張って背筋を伸ばして行こうではないか!」 そんな中、空気を読まないギーシュだけが、元気一杯でミス・ロングビルの後をついて行くのだった。 そうして歩くこと数分。 とにもかくにも、一行は目的地・ウエストウッドの村へとたどり着く。 「あっ! マチルダ姉ちゃんだ!」 「おかえりなさい、マチルダお姉ちゃん」 等々、ミス・ロングビルを見つけた子供達が集まってきた。 「マチルダ?」 「私の本名ですわ」 「ふーん。好かれてるのねぇ」 群がってくる子供で団子状態になった彼女をもキュルケはニヤニヤと笑って見ている。 ミス・ロングビルは少し照れたふうに咳払いをして、自分の袖にしがみついている少年に確認をとる。 「ジャック、テファお姉ちゃんは家に居る?」 「おでかけしてるよー。きのみをとりにー」 「そうかい」 確認して、一行に向けてにっこりと極上の笑顔を見せて言う。 「さて、この村はご覧の通り子供達だけで暮らしています。 ですから、お客だからと言ってただ歓迎と言うワケにはいきません。 貴族の皆様には申し訳ないのですが……お茶をお出しするための焚き木拾いと水汲み、尋ね人が帰るまで手分けしてお願いしますね?」 タダメシ食わす気はこれっポチもねーぞ、と云う文字が笑顔の裏にバッチリ見える。 ……嫌などと言えるワケが無かった。 さて、男は力仕事の水汲み、女は焚き木拾いと割り当てが決まって、キュルケはブツクサ言いながら、ルイズはぼーっとしたまま、村の周囲で落ちた枝などを拾っていたその頃。 サイトとギーシュは恐ろしいモノと出会っていた。 全身がガクガクと震える。汗がふきだす。見開いた目を閉じる事も出来ない。 あんな恐ろしいモノ、今まで生きてきた十数年の間、見たことが無かった。 ―――それは水を汲みに来た泉で水浴びをする清楚で可憐な金髪の少女の、おっぱい。 おっぱいだ。そう。それは間違いなくおっぱいのはずだ。 けれど、それは……それは、サイズが違う。存在感が違う。インパクトが違う。 あどけなさすら感じさせるか細い少女の胸に揺れる二つの果実。 ルイズのそれをサクランボとすれば、スイカに違いない。 キュルケやフーケのそれですらメロンなのにスイカ! 夏の王者スイカ! ビバスイカップ!! サイトの脳裏では名曲『スイカの名産地』が流れていた。 スイカとか知らないギーシュの脳裏にも流れていたっぽい。 スイカの名産地は素敵な所なのだ。綺麗なあの娘の艶姿なのだ。 今、異世界人とメイジの少年、二人の心は一つになっていた。 すなわち「スイカにかぶりつきてえぇぇぇ!!」と。 「どっ、どうする!? どうしたら良いと思うかね、サイト!?」 「あああ、慌てるなギーシュ。ここは落ち着いて、落ち着いて―――られるかよ!」 「そそそそ、素数を数えるんだサイト。素数は1とその数以外では割り切れない孤独な数字。 素数がぼくらに冷静さを与えてくれるッ!」 「そうか素数か! って、有るのかよ素数の概念! ハルケギニア的に!」 錯乱して世界観すらピンチに陥れる発言をする二人は、泉の側の茂みに隠れていた。 おっぱいは……じゃなくて少女は全裸であった。だって水浴び中だし。 少女の周囲では、一緒に水浴びをする幼女が数人居たが、幸いそっちに反応するヤバい趣味は二人とも持っていない。 って言うか、おっぱいしか目に入ってなかった。むしろ脳ミソがおっぱいになっていた。耳が長いとかも完全に意識の外だ。 ゆえに―――気がついた時には決定的に遅い。 「ナニをやっているのか聞いてもイイかしら、エロ犬?」 「…………る、るいずサン、居たんディスかー?」 背後に『遅くなったサイトを心配して探しに来た少女』改め『怒れる魔王』が降臨していた事に気付けなかったのだ。 「こここ、これは、あの、その、決してワザとではなくてディスね!」 「問答無用!」 ルイズのマンティコア隊式アイアンクローが額に食い込んだ。 白魚を思わせる五指が外見からは思いもつかない怪力を発揮して、万力の如くギチギチサイトのアタマを締め上げる。 更にそうして掌握したまま、ルイズは鋭く立てた手刀を喉に向かって突く突く突く突く。 「おぶっ! おぶっ! おぶっ! おぶっ! おあぶっ!!」 いわゆる地獄突き。若い子は知らないかもしれない『人間山脈』の必殺技である。 「さーて、それじゃあ釈明を聞こうかしら?」 ぷしゅ~っ、と喉から煙を上げるサイトを投げ捨て、ルイズがにっこり笑った。 ガクガクと首を縦にふる、ちょっとチビっちゃったギーシュ。 突然の事態に子供達と身を寄せ合って震えるおっぱい少女。 ルイズと一緒にサイトを探しに来ていたキュルケだけが、嬉しそうにルイズの復活を喜んでいた。 結局「あれを見て目を逸らせる男は居ない」と言い訳するギーシュをキュルケとのツープラトン・ラリアット『クロスボンバー』で沈め、ルイズ達は水浴びをしていたおっぱい少女ことティファニアと出合った。 「まさか、この子がアルビオン王族だったなんて……」 「なるほど、確かにワケありよね」 ミス・ロングビルことフーケことマチルダ姉さんの連れてきた人という事で、すこしだけ警戒を解いたティファニアと共に戻ってきた小屋で、四人の女性はテーブルを囲んで話し合う。 ちなみにサイトとギーシュは床で正座。 「ティファニアは正真正銘の王族の娘さ。財務監督官をしていた父親の大公は国王の弟。 つまり死んじまったウェールズ皇太子とは従妹に当たるってワケだね」 「そのティファニア嬢とミス・ロングビル?女史は、いったいどういうご関係で?」 すっかりフーケの口調に戻ったメガネ美女に、恐る恐るといった様子で聞くギーシュ。 ティファニアの水浴びを覗いていたと知られ、先程3メートル級ゴーレムにサイト共々ボコられたから怯えているのだ。 「マチルダで良いよ。この子らにはそう呼ばれてるからね。ややこしいのは面倒だ。私の本名なんだよ。マチルダ・オブ・サウスゴータ」 「サウスゴータって言ったら、首都のロンディニウムに次ぐアルビオン第二の都市じゃないの!」 「しかも始祖ブリミルの造りたもうた最初の都市とも言われる、格式伝統ともにハルケギニアで最高と言っても良い都じゃないか! いやはや、マチルダ女史は随分と立派な家柄のご出身だったのだな!」 「そのサウスゴータ様が、なんで盗ぞ……学院秘書なんかに身を落としたのよ?」 代わる代わる問いを投げかける少年少女に、マチルダはゆっくりと話始めた。 大公であり財務監督官でもあったティファニアの父が、エルフを愛人としていた事。 マチルダの両親、サウスゴータ太守夫婦は大公に仕えており、彼女達を邸で匿っていた事。 その事からティファニアとマチルダは幼い頃から一緒に育った姉妹同然の関係だった事。 四年前、ハルケギニアの誰もが恐れ、敵視するエルフと愛し合っていた事が発覚し、愛人と娘の追放を求められた大公は要求を断った事。 サウスゴータへと王国の軍隊が派遣され、彼女達を助けるために幽閉されていた大公は脱獄した事。 ティファニアを逃がそうと王軍に抵抗した大公と太守夫婦、そしてティファニアの母は皆、王軍に殺されてしまった事。 マチルダとティファニアだけが生き延びて、この村で孤児達と共にひっそりと生きてきた事を、訥々とルイズ達に語っていく。 全てを話し終える頃には、太陽が地平線に落ちようとしていた。 ルイズ達にしばらく言葉は無い。 そんな境遇の少女に、王党派の貴族を助けるために来てくれなどとは、中々言える事では無いのだから。 ―――元司教オリヴァー・クロムウェルは反乱軍レコン・キスタの総司令官である。 深い緑のローブで覆った痩身を震わせる男の目算では、今頃レコン・キスタからは『反乱軍』という冠詞が取れて、 自分はアルビオン新政府レコン・キスタのクロムウェル皇帝と呼ばれているはずであった。 だが、その目論見はあまりにもあっけなく消えうせてしまっている。 いや、目論みが外れたどころでは無い。 王党派残党が立て篭もるニューカッスル城へと派兵されたレコン・キスタ五万の将兵と、それを乗せた軍艦50隻が一瞬で壊滅したという情報は、敗戦の翌日には届いていた。 王党派の新型魔法兵器だ、伝説の虚無の力だ、国王と皇太子による風の六乗・ヘクサゴンスペルによる攻撃だと、将兵の間ではウワサに溢れている。 そのどれもが違う。相似大系と呼ばれる異界の魔法によって、たった一人の神の如き男がやったのだと、クロムウェルは知っていた。 目の前の女が、そう教えたから。 「おおおお、ミス! ミス・シェフィールド! お助け下さい! この矮小な男を、この哀れな男を、どうか、どうか! 空軍力の半数を失い、王党派の壊滅もならず、将兵は混乱しております! あげく艦船を沈めた力が『虚無』やも知れぬとのウワサに惑わされ、レコン・キスタから離反する者まで居る始末!! このままでは……このままでは私は……」 「なに、心配など要らぬ。要らぬのだよ、総司令殿」 長い黒髪の美女・シェフィールドの足元にはいつくばって懇願していたクロムウェルの頭上から声がかけられる。 杖を携えた従者を左右と背後に従えて現われた、薄暗い地下室の闇を払うような美丈夫の声だ。 「どれほど恐るべき魔法でも、戦場に居なければ意味は成さぬ。 戦って勝つのが難しいのならば戦わぬようにすれば、それでかまわんのだからな!」 整った顔立ちに拳闘士のように鍛え上げられた身体。 青い髪と、同じ色の見事な髭をたくわえた男が、快活な表情に威厳をたたえてクロムウルに歩み寄る。 「よく来てくれたな、クロムウェル総司令殿」 「こ、これは陛下。この度の不始末はまことに、まことに―――」 グラン・トロワ地下室の床に額をこすりつけるクロムウェル。 ここはガリア王国の王都リュティス。 その王宮であるウェルサルテイル宮殿の地下に、クロムウェルは魔法による転移で連れて来られていた。 「かしこまる必要は無いとも司教殿! 私は叱責のためではなく、司教殿に新たな力をさしあげるために呼んだのだからな!」 そう。目の前の美丈夫、ガリア王ジョゼフの命によって。 元々クロムウェルは一介の地方司教に過ぎない。 メイジですらない彼は神官としての敬意は受けても、反乱軍の司令官になど選ばれるはずの無い男であった。 そんなクロムウェルを後押しし、アルビオン王家を転覆させるほどの反乱を成功させたのは、全てこのジョゼフ王の力。 もちろん、クロムウェル以外のレコン・キスタ貴族の誰一人とて知らぬ事ではあるが。 そして今も、ジョゼフはクロムウェルに恐るべき力を貸そうとしていた。 「さあ、ついてきたまえクロムウェル卿」 シェフィールドに先導され、より深い地下へと案内される一行。 進むほどに寒さを増す螺旋階段を下りる、クロムウェルの震えは止まらない。 寒さと、この先にあるであろう未知の何かに怯えているのだ。 そんな地位に似合わぬ臆病な男に、無能王と陰口を叩かれる男が話しかけた。 「時にクロムウェル卿。君は『召喚されし書物』というモノを知っているかね?」 「……は、はい、存じております。 30年程前に、いずこかのメイジが実験中偶然召喚した異界の書物だと。 今は確か……ゲルマニアのツェルプストー家の家宝になっているはず。 その価値は、価格にして数千エキューは下らぬとか」 「はは! 価格など何の意味も無い。 いや、その書物に価値など何一つ無いのだよ司教殿! 重要なのは『異界』なる場所が間違いなく存在しており、その異界からハルケギニアには存在せぬものを召喚する方法があるという事だ! 私はそのメイジの行った召喚実験の記録を手に入れ、それを詳細に検証させた! 王立魔法研究院の総力を結集してだ! ああ、何年もかけてだとも!」 ついに階段の終点へとたどり着く。 ツララの下がった天井の下、霜の降りた鉄扉の前には、防寒の毛皮を纏ったジェルヴェーヌとワルドが立っている。 「完成された呪文により、私は異界の品々を手に入れる事ができた! 尤も、その召喚魔法にも欠点があったのだがな。 実に残念な事に、呪文は生命を持つ者を呼び出す事が出来なかったのだよ! だが問題は無い。ああまったく問題は無い! そうだろう、クロムウェル卿! なぜなら、我等の手には『アンドバリの指輪』があるのだから!!」 自分が呼ばれた意味と、この地下室の寒さの意味を理解して、クロムウェルは怯えた。 怯えて、シェフィールドやワルド、それにジェルヴェーヌを見る。 指輪を数回、シェフィールドに言われて渡していたクロムウェルは彼女等が死体でないかと疑ったのだ。 そう。この扉の先にはきっと死体が積まれているに違いない。 異界から召喚されたという、無数の死体が。 「異世界の魔法を君に与えてやろう司教殿! 喜びたまえ! 誇りたまえ! お前は異界の魔術師を指揮して勝利する歴史上初めての指揮官になるのだからな!!」 巨躯を揺らして傲然と笑う王の背で、重たい鉄の扉が開かれる。 「ひいぃぃ!」 いつのまにかしゃがみ込んでいたクロムウェルは、情けなく悲鳴をあげた。 目の前に現れるのは、地獄と呼ばれる『地球』で無残な死をとげた刻印魔術師や犯罪魔導師達の屍と屍と屍と屍と屍と…… ―――平賀才人はガンダールヴにして地獄の悪鬼である。 二つの月に照らされる村の小さな広場で、サイトはデルフを手に素振りをしていた。 一応自分達の事情をティファニアに話はしたものの、返事はしばらく待って欲しいと彼女に言われ、なら答えが出るまではと、一行はウエストウッド村で滞在する事になったのである。 「なあデルフ、あの子は来てくれると思うか?」 「さぁね。俺は単なる剣だからね。人間のココロのキビなんて面倒なモンはわからねぇよ」 「六千年も生きてるのにか?」 「六千年ぽっち生きてても、だな」 素振りをしながら話しかけたデルフの返答はそっけないようでいて、なんだか深いような気もする。 「だったら伝説の剣に戦いに関する質問するぜデルフリンガー。 この前言ってたガンダールヴの力のコントロールってのは、どうやれば良いんだ? やっぱアレ? 明鏡止水とか、座禅でココロを自然と一体にするとか言うヤツ?」 「悪りぃがそんなのは奇麗事だぜ相棒。 剣を片手に戦ってる最中に、そんな事やられちゃ俺っちも敵もたまんねぇやな。 必要なのは氷のような殺意だよ。冷たくて硬い、鋼鉄みてーな殺意を持てば心は震えねぇ。 揺るがない、動かない、燃えるモンでも溢れるモンでも無い、ただ敵を殺すって暗殺者みてーな殺意で戦えば、ガンダールヴのルーンは力を発揮しねぇのさ」 身も蓋も無いデルフの言葉に黙り込むサイト。どうも自分には無理そうな事だ。 それでも一応、努力はしてみることにした。 デルフリンガーの柄を両手で握り、意識を集中してみたりする。 まぁ、今まで平和な日本で暮らしていた、その上剣道部でもないサイトに「意識の集中」の仕方なんかは全然判らないのだけど。 それでもとにかく、氷のような殺意とかを映画などで見た知識の中からイメージしてみる。 「きえぇぇぇぇいっ!」 「きゃっ!?」 突然奇声を発したサイトに驚いて、通りがかりの少女が可愛い悲鳴をあげて転んでしまった。 不思議な形の寝間着を着たエルフとのハーフ、ティファニアである。 「わ、悪い。大丈夫だったか?」 「あ、うん。私こそごめんなさい」 倒れた少女に手を差し伸べるサイト。 不謹慎にも、ぐっと力を入れて立たせる時に夜着の下で揺れたおっぱいにサイトの目は釘付けになった。 その視線に気がついて、恥ずかしそうに胸を隠すティファニア。 サイズが大きすぎて隠し切れず、腕に抱かれてむにょんとはみ出たおっぱいが、なんだか余計にエッチだった。 ゴクンと生唾を飲み込んでから、あわてて目を逸らし言い訳をするサイト。 「ご、ごめん。その……きみがあんまり綺麗だったから」 「綺麗だなんて……そんな事言われたのは初めてだわ。あなたはエルフが恐くないの?」 キョトンと、不思議そうに聞くティファニア。 同年代の男の子と話すのが初めてなので不思議なのだ。 もう一人の同年代であるギーシュは、多少エルフの特徴である耳に対して警戒をしている様子であったし。 「いや、そんな全然。だって本当に綺麗じゃんかティファニアって。 なんであいつらが恐がるのか、まったく理解できねぇもん」 天然な少年の言葉に、少女の頬がポッと赤くなる。 ルイズ相手にもこれぐらい言えたら、もうちょっと報われるだろうに。 そのルイズはと言うと、双月の下で見詰め合う二人を小屋の影から睨み付けていたり。 夜中に寝床から抜け出したサイトを心配してつけて来たのだが、出て行くタイミングを逸している間に、こんな状況になってしまったのである。 「あの使い魔ったらぁぁぁ! 私には可愛いなんて一度も言ったこと無いクセにいぃぃぃ!」 ご立腹して飛び出そうとしたルイズだったが、サイト達がなにやら話し始めた事でまたタイミングを失う。 「こんな夜中まで剣の練習なんて、あなた随分熱心なのね。ええっと…ミスタ・ヒラガー・サイト?」 「サイトで良いよ。まぁ頑張らないとって決めたからさ。練習ぐらいしねぇと」 「私もテファで良いわ。頑張るって、お城の人達と一緒に戦うことを?」 「いいや。俺は王様とか、本当は関係ないから……ルイズと、それに故郷の家族とかさ、いざって時に守らなきゃってだけなんだよ」 「ルイズさんって、あの桃色の髪の綺麗な人? 恋人なの?」 「ち、違うよ! そうだったら良いなぁって思う事はあるけどさ。俺はアイツの使い魔だから」 その言葉に、ルイズの胸はなんだか切なくて痛くて苦しくなった。 そうだったら良いなって! 良いなって思うって! サイトはルイズの使い魔だ。 使い魔だから危険な目に遭って、片腕を失くしてしまうような怪我をした。 自分のせいで、と思うと、ルイズはこれ以上サイトが自分のそばに居てはいけないのでは無いかと不安になる。 なのに、ワルドに殺されそうになった時、自分が呼んだもの、助けに駆けつけてくれたのもサイトだったのだ。 その時だって、サイトは恐ろしい敵の魔術で大変な目にあってしまうかもしれなかった。 間一髪でグレン・アザレイが現われなければ、きっと醜い怪物にされるという死よりも恐ろしい目に遭っていたはずなのだ。 自分の『せいで』戦って、いつかサイトが死んでしまうかもしれない。 考えるだけで、ルイズは心が凍りつきそうになる。 なのに。 サイトが自分の『ために』戦ってくれていると思うだけで、ルイズの胸は熱くなった。 使い魔だからでは無く、自分を好きだから駆けつけてきたのだと思うと、恐れが歓喜にとってかわるようだった。 向こうではティファが、人間が使い魔だなんて変わってるのね、などと驚いていたが、まったく耳に入らない。 ルイズはふわふわした足取りで貸してもらった小屋の自室に帰る。 なんだかニヤニヤした顔でベッドへ倒れこんだルイズは、同室になっていたキュルケをたいそう気味悪るがらせるのだった。 「やっぱり偉いわ、あなたって」 一方で、サイトとティファの会話は続いている。 「偉い? 別に偉くなんて……」 「だって、誰かを守るために命をかけるなんて、誰にでも出来る事じゃ無いわ。 それに、本当は関係ないお城の人達を助けるために、こんな所まで来たんでしょう? それは、とても立派な事だと私は思う」 ストレートなティファの褒め言葉に、サイトは両手をブンブンと振ってテレた。 地球に居た頃もあんまり褒められる事とは無縁だった少年だ。 こんな美人で、しかも革命的なおっぱいの女の子に褒められるなんて! その上真夜中に二人っきりで寝間着姿の相手に! と、すっかり舞い上がってアップアップになるのも当然の事だろう。 「いや、そんな、俺なんて! それに……それに……」 しかし、今も死ぬために戦いの準備をしている城の人達の事を思い出して、一気に脳の熱が醒めた。 「それに俺、お城の人達の事なんて良くは知らないけどさ、あの人達はみんないい人だったんだ。そりゃ、全員と話したワケでも無いけど。 明日死ぬかもしれないってのに、俺なんかに優しくしてくれてさ、無理に明るく振舞ってて、誰も泣き言なんか言わなくって、守るべき物のために戦うんだって…… 正直に言ったら、馬鹿みたいだって思う。だって、死んだら終わりなんだぜ? しかも今だったら、逃げようと思ったら逃げられるし、他人に任せようと思ったら任せられるんだ。 全部全部グレン・アザレイに任せちまえば良い事じゃねーか! 誇りとか名誉とか、忠誠だとか民のためだとか、ホントにわかんねぇよ。 けど、守りたいって気持ちは判るから……判るから、あの人達にこんな所で死んで欲しくねぇんだ。 結局勝手なんだな、俺って」 なんだかせつなくなってサイトはしょんぼりと落ち込んだ。 特にグレン・アザレイという『英雄』に全てを任せれば良いなんて、自分が絶対に言ってはいけない言葉だったから。 それでは魔法世界全ての人のために地球人を皆殺しにしようとしたグレンの行為も認めてしまう。 でも自分は実際にそれを頼みに行った事に、今更気がついてしまったのだ。 「そうね。あなたはきっと自分勝手だわ」 ティファの言葉がそんなサイトに追い討ちをかける。 更にうなだれた少年の肩に、そっとやわらかな手が添えられた。 「でもそれは、きっと素敵な自分勝手なんだわ」 鈴を転がすようなティファの声が耳元で囁かれる。 サイトはなんだか泣きたい気持ちになって、小さく「ありがとう」とだけ答えていた。 次へ 前に戻る 目次に戻る
https://w.atwiki.jp/rozenindex/pages/258.html
演説をして敵全体に打撃属性のダメージ+スタン付加。 敵の方が早い場合、何も出来ずにジャンクになる可能性もorz
https://w.atwiki.jp/soufro/pages/1293.html
【解説】 演説を行うときに若干有利になります。 特技辞典/あ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7315.html
前ページ次ページゴーストステップ・ゼロ アルビオン王党派とレコン・キスタの最後の戦いは数時間後に迫っていた。 王党派が篭城するニューカッスル城はレコン・キスタ率いる数万の軍勢により、十重二十重に包囲されている。ニューカッスル城の地形的な制約により逃亡は出来ない状態だったが、王党派は元より逃げる事を考えておらず、レコン・キスタの方もこれ以上王党派を生かしておこうとは考えてもいなかった。 開戦を告げる鬨の声が上がってしまえば、王党派はただその勢いに押し潰される運命にあるだろう事は戦のイロハを知らない幼子でも容易く理解できるだろう。 ゴーストステップ・ゼロ クライマックスフェイズ “ ビューティフルデイ / Beautiful day ” シーンカード:フェイト( 公正 / 正義の裁き。因果応報。ツケを払う。何らかの報いを受ける。) ニューカッスル城を取り巻く軍勢は緊張はしていたが、悲壮感とは無縁だ。しかし、それも当り前の話だろう。 戦いの趨勢は既に決しており、戦力比は多勢に無勢と言う事すらおこがましい程だからだ。 確かに少なくない人数が王党派による攻撃の犠牲になるだろうが、それは運の悪いごく一部に過ぎない。攻め手の大多数は勝利の美酒を浴びる事になるのは間違い無い事だからだ。 軍勢の最前線に陣を張る傭兵や、平民で編成された兵達も軽口を言い合っている。中には早くも酒精を摂っているのか、顔を赤くした者も少なくない。 そんな雑然とした軍勢の中、酷く酔っているのか革鎧を身に着けた一人の傭兵が危なっかしい足取りで森の方へ進んでいる、 進路を塞いでいた連中は、笑いながらもゲロを吐かれてはたまらないと軽口を叩きながら道を開けてやる。中には珍しく真面目に所属を聞いて来る騎士もいるにはいたが、男がえずくようなそぶりをしながら前線を指差すと、しかめっ面を浮かべてどこぞの平民かと解釈して離れていく。男の方も億劫そうにではあるが、ペコペコと頭を下げながら前線と本陣の間にある森の中へと入っていった。 鬱蒼とした森に入った男は前線から十分に離れると、身に纏っていた革鎧を乱雑に脱ぎ捨てると持っていたリュクから外套を取り出して身に纏い、持っていた大剣を背に掛ける。 懐から取り出した<ポケットロン>で時間を確認すると、男=ヒューはそれまでの足取りとは全く違う動きで森の中に分け入っていく。 ヒューの足取りは重く、身体は熱病にでも罹っているのかと思いたくなる位ふらふらと頼りなかったが、その動きには確固たる意志があった。 もしもその姿を見ている者がいたならば、その姿に死神を……或いは致死性の毒を帯びた鋭いナイフを連想しただろう。 しかし、その姿は誰にも把握する事は適わない、それが死神……或いはカゲと呼ばれる者だから。 気配は限りなく希薄に……身に纏う外套は森となり……歩く音は風に揺れる木々の囁きに消えていく。 今まで積んできた経験は人の意識を容易く謀り、その歩みを止める事を誰にも赦さなかった。 否、誰が考えるだろう。木々の陰が天幕の襞が暗殺者の影であると、己や己の騎馬の息遣いが死神の吐息だと。 結末が見えている決戦を前に、高揚し弛緩した精神に“それ”を察しろというのはあまりに理不尽だろうか。ここには“真実”を見通す目(フェイト)も、“難攻不落”の騎士(カブト)も、“全てをご破算に”する道化(カブキ)もいないのだから。 ヒューが目指す場所は容易に判別できた。様々な天幕がひしめく本陣の中でも、一際大きく最も警備が厳重な天幕がある。 周囲で警備している兵達の話を聞くだけで、目的の人物がその場に居るだろう事は確認できた。 オリヴァー・クロムウェル……レコン・キスタの総司令官にして、当代きっての詐欺師である。 もっとも、ヒューの考えでは人形遣いの人形か道化に過ぎない人物だ。しかし、道化だろうと人形だろうとこの魔法至上主義のハルケギニアでここまでの騒動を起こす事が出来たのはある意味尊敬に値するだろう。 (ハルケギニアだから起こったとも言えるが。) 天幕にはひっきりなしに人が出入りしている、様々な仕事があるのだろうか書類を持った人物も少なくはない。 ただ、この5万対3百という兵力差に安心しているのか、ヒューが知っている空気はごく僅かだ、笑い声さえ聞こえてくる。 開戦の刻限まで残り数時間、ヒューはその時に備えてその目を閉じた。 決戦を控えたもう一つの陣営……王党派にも静かな、しかしこの戦いの趨勢を決する動きがあった。 ニューカッスル城の城門の内には最後の戦いに臨むべく、王党派最後の戦力3百が控えていた。その中の一人、アルビオン王国最後の皇太子、ウェールズ・テューダーに一人の騎士が歩み寄って話しかける。 騎士はこの国の人物ではなかった、トリステイン王国から遣わされた最後の大使の護衛として随行してきたトリステイン王国魔法衛視隊グリフォン隊隊長、ワルド子爵だった。 「ウェールズ皇太子、我が国の大使から言付けを預かってまいりました。」 そう言うと懐から折りたたんだ一枚の紙を差し出す。 「ラ・ヴァリエール嬢から?分かった、預かろう。」 「申し訳ありませぬ、読んでいただいたら即座に処分するよう言いつかっておりますので、読んだ後は返却して頂きたい。」 「承知した。」 ワルドの言葉から事は『虚無』に関する事だと推察したウェールズは言葉少なに返事をすると、渡された文面に目を通して即座に返す。 「これは、可能なのかね?」 「さて、私は内容を聞いておりませんので何とも言い難いのですが。大使は信じるか否かは皇太子にお任せする、と。 そして、信じてもらえるのなら誇りに賭けてやってみせると申しておりました。 ご返答を、ウェールズ・テューダー皇太子殿下。」 真剣なワルドの眼差しを受けたウェールズは暫く考えに沈んだ後、「信じよう」と短く述べた。 ワルドはその答えを聞くと、手紙を懐に戻して「皇太子殿下に武運長久なることを」と述べて魔法衛視隊の敬礼をする。 ウェールズはそれに対して「ありがとう」とアルビオン王国空軍の敬礼で返す。 否、敬礼をしたのはウェールズだけではなかった。城門前に集う王党派最後の騎士・兵の全て、貴族も平民も全員が笑顔を浮かべ、それぞれの誇りを秘めた胸を張って敬礼をしていた。 彼等は隣国の騎士と自国の皇太子の間にどんな話があったか知らない。だが、滅び行く自分達の所に来てくれた最後の客人、その客人達に言葉では伝えきれない何かを伝えたかった。 それは何千何万と言葉を費やしても伝えきれないのかもしれない、たった一言で済むのかもしれない。だけど彼等には言うべき言葉が思い浮かばなかった、だから相手が騎士だから軍人だから伝わると信じて敬礼を贈った。 彼等の敬礼を受けたワルドは一度唇を引き締めた後、城門前に集った全ての兵(つわもの)達に届けとばかりに敬礼をして声 を上げる。 「アルビオン王国の兵(つわもの)に武運長久なることを!」 そして、アルビオン王国の兵(つわもの)もワルド、いや最後の客人達に返礼を返す。 「我が国最後の客人に幸運の風が吹く事を!」 城門前の広場から立ち去ったワルドは、ニューカッスル城の最も高い場所…即ち天守閣へ向かった。 ワルドが天守閣の頂上に通じる扉を開くと、そこにはルイズが<始祖のオルゴール>を手に戦場を眺めていた。 「ルイズ、ウェールズ殿下から返事を受け取ってきたよ。 君の誇りに期待するそうだ。」 「そう、なら意地でも答えないとね。」 何の気負いも無くやってのけると言い放ったルイズに、ワルドは何をするつもりなのかと問いかける。 そんなワルドに、ルイズはただ悪戯っぽい顔で「秘密」と返すだけだった。 そうこうしている内に開戦の時間になったのか、城門の前にレコン・キスタ側から馬に乗った最終勧告の使者がやって来た。 使者は形式通りの降服勧告をした後、聞く人間がいない事を確認するとレキシントン号からの空砲を合図として総攻撃を行う旨を告げた後、馬首を巡らせて悠々と立ち去って行く。 それから10分程経った頃だろうか、ニューカッスル城の前に浮遊していた軍艦の中でも一際巨大なフネ……レキシントン号の右舷砲門が城門に向けられた直後、威力を伴わない虐殺の咆哮が戦場に響き渡る。 レコン・キスタの軍勢が鬨の声を上げながら王党派が立て篭もるニューカッスル城へ進軍を開始した正にその時、全ての人々の眼前に奇跡が聳え立った。 それは、あまりにも大きかった。高さはニューカッスル城を遙かに凌ぎ、広がった足元は城を丸ごと包み込む程に。 それは、自ら光を放っていた。大嵐が過ぎ去った翌日の朝日の様な黄金の光を。 そしてそれは誰しも知っている姿だった。『両手を前に突き出した人型の“それ”』は、大陸に多数存在する始祖像と全く同じ姿だったのだ。 戦場にある全ての音が止まった、ニューカッスル城に向かう軍勢はその巨大な姿に思わず足を止め。城の内にいる者達は周囲を包んでいる黄金の光に戸惑って何も出来ずにいた。 誰もが息を呑み、動けずにいるそんな時、突如現れた人型の何かはゆっくりと光を強めていく。暗闇を突然消し去る閃光の様に、真夏の太陽の様に。 そして誰もが眩しさに目を開けていられなくなったその瞬間、轟音と共にもう一つの奇跡が起きた。 強烈な光と共に“それ”が消え、ようやく目を開けた人々の耳に、レコン・キスタ軍のそこかしこから上がる驚愕の声が届き始める、最初は雨だれの様に、しかしそれは次第に小雨を経て驟雨へそして豪雨を通り越して嵐の様な騒ぎに代わっていった。 レコン・キスタに組する全ての者達が持っていた、ありとあらゆる武装が消えて無くなっていたのだ。 それは傭兵や騎士達が身に着けていた甲冑や武器は言うに及ばず、メイジの杖。果てはフネに積まれていた大砲や、風石の殆どまでもがその対象となっていた。 風石の大部分を失ったフネはニューカッスル城の前にその身を横たえた、フネの側面を城に向けて即席の砲台として使おうにも肝心の大砲そのものが消えてしまっており、その身は既にただの障害物としか活用できなくなっている。 ニューカッスル城の城門がゆっくりと開く。 城門から“甲冑に身を包んだ”ウェールズを先頭に、完全武装の王党派3百人が駒を進める。 戦場にウェールズの凛々しい声が響き渡った。 「我がテューダー王朝に始祖の加護無しと矛を向けてきた諸侯、そしてレコン・キスタの者達に告げる! 我はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーである! 先の光を受けた諸君は杖を失ったと思う!それはとりもなおさず我等テューダー王朝に未だ始祖の御加護があるという事、始祖御自ら我等に救いの手を伸ばし、加護なき者達に裁きを与えて下さったのだ。 又、その証しに我等王党派は全ての武装を赦されている。 翻って諸君等はどうか、杖のみならず。我等王党派から奸計をもって奪ったロイヤル・ソヴリンまでも無惨な姿を曝している、諸君等に始祖の御加護があればこの様な無様は曝してはいない筈だ。 始祖ブリミルが加護は我等王党派にこそあり!始祖ブリミルの怒りに触れたくなくば道を開けよ! いざ往かん王党派の勇者達よ!始祖ブリミルよ今度は我等の勇気を御照覧あれ! 全軍突撃!」 風の魔法によって戦場の隅々まで響き渡ったウェールズの声と共に、王党派3百騎がレコン・キスタに突撃を敢行する。 傭兵はもとより、諸候領からかき集められた民兵等の軍を構成する大半の者達は、隊列を組んで突撃してきた王党派から我先にと背を向けて逃げ始めた。 それはそうだろう。今朝、いや先程まで戦勝ムードに包まれて戦いが終わった後の事を考えていたのだ、それなのに手に持っていた武器はもとより、自らの命を守る鎧までも朝露の様に消え去ってしまった以上、戦おうなど誰も思わないだろう。 実際は数に任せて押し込んでしまえば容易く王党派を潰せたはずである。しかし、彼等にはそうしない……いや、出来ない理由があった。眩い光を放って奇跡を起こして消えていった始祖の似姿である、生まれてから今まで貴族やメイジという者達に圧迫されながら生きてきた彼等には、魔法ですらも生温い奇跡を起こした存在に反抗する事等、思いつきもしなかったのだ。 メイジが魔法を使えていれば話は違っていたかもしれなかったが、当のメイジですら杖を失って魔法が使えない状態にあった。 ウェールズ率いる王党派はかつて軍勢だったモノを切り裂きながら、レコン・キスタの総司令官オリヴァー・クロムウェルが いるだろう本陣へと突き進んで行く。 前線を抜け貴族やその護衛の騎士達が殆どであろう本陣を前にウェールズと王党派の者達はその動きを止めた。 彼等の前に徒手空拳で立ち塞がった者達がいる。 それは強壮たる体躯を誇る騎士、老練な眼差しを宿した老貴族、決して多くはないが凶暴な亜人達。 亜人以外の人々をウェールズは知っていた、かつてレコン・キスタと戦った際に轡を共に並べ、共に戦ってきた人々だ。 ウェールズは彼等の真実を知っていた。クロムウェルさえ討ち果たせば彼等を助ける事が出来るだろう、しかし己にはそれをするだけの余裕も戦力も無い。一時の混乱から背後の軍勢が目覚めてしまえば自分達は容易く押し潰されるだろう。 だから彼は己が配下に命じた。 「速やかに彼の者達を倒し、クロムウェルを討つ。あの者達に一片の慈悲も必要無い、突撃!」 ウェールズの血を吐くような号令と共に3百の騎兵は目の前の集団に襲いかかっていく。 脳内の<IANUS>が正午を告げる30分程前にヒューは目蓋を開いた。 快適とは程遠い全身を襲う激痛からくる目覚めだったが、呻きも悲鳴も押し殺した。息をする事さえ困難を伴う痛みの中、懐から銀色のケースを取り出す。 中にはただ一本だけ無針注射器があった。震える手でそれを首筋に突き立てて暫く経つと、痛みで強張っていた身体からゆっくりと力が抜けていくのが見て取れた。 「やれやれ、いざという時の為に残しておいた最後の一本をここで使う事になるとはね。」 自嘲気味にそう呟いたヒューは持ってきた鞄から水筒を取り出すと、中に残っていた水を最後の一滴まで飲み干す。 空になった水筒を放り出したその時、ニューカッスル城の方から砲撃の音と鬨の声が響いてくる。 だが、しばらくすると戦場から静寂が広がっていった、ヒューが潜む天幕の周囲でもざわめきが広がっていく。 ざわめく人々の声には困惑と恐れが同居していた、クロムウェルがいる天幕の周囲を警護している兵士達も畏怖をその顔に浮かべており、落ち着きが無い。 彼等は揃ってニューカッスル城へその目を向けている、その視線の先には巨大なモニュメントが聳え立っていた。 その大きさは非常識だった、何しろニューカッスル城を丸ごと包み込む程だから。 その姿は誰もが知っていた、戦場にいる人々が生まれる以前からハルケギニア全土で奉じられてきた対象だから。 それは分かり易い力の形だった、人々が見る前で瞬きの時こそあれ一瞬で現れたのだ。そんな芸当はメイジが操る魔法はもとより、亜人達が操る先住魔法ですら不可能な所業だからだ。 しかし、異変はそれだけでは終わらなかった。 戦場に集った人々の目を一身に集めていた“始祖の似姿”が一際輝き、その光が戦場全体を覆ったかと思うと、周囲……いや、戦場に集うレコン・キスタの軍勢から戸惑いの声と怒号が上がる。 ヒューが潜む天幕の周囲からも「私の杖が!」という貴族の悲鳴や、「なんだってんだ畜生!」という衛兵の戸惑う声が聞こえて来た。 そして、時間を然程置かず戦場に凛々しい若者の声が朗々と響き渡る。 天幕の影からそれを見たヒューは、別れてきた少女が取った選択を理解した。そして自分がこれからやるべき事・やろうとしている事を考える。 即ち、<アンドバリの指輪>の奪取。 水の精霊の秘宝と呼ばれるそれは野放しにしておくべき物ではないだろう。放って置けば要らぬ騒動を引き起こすだろうし、なにより未練が残る、発つ鳥後を濁さぬと言うつもりはないが、死ぬ時に後悔の種を残すのは自分のスタイルではない。 しかし、マヤカシの様に運命論者を気取るつもりは無いが、よくよく自分は<アンドバリの指輪>やN◎VAで最後に解決したペルソナ・リポートといった厄介な事件に巻き込まれる星の下に生まれついたらしい。 そこまで考えて、不意にヒューは苦笑を浮かべた。数ヶ月前まで死に掛けていたチンピラだったくせに、これではまるでヒーローの様な口ぶりじゃないか。確かに何も知らなかった子供の頃はTVで活躍するヒーロー達に熱狂していた、現実を知り絶望を知って、気楽な場所に自分の立ち位置を決めてはいたが……どうやら根っこの方は昔っから変わっていなかったらしい。 まぁ、この状態と状況だ。死ぬ前に昔見た夢を叶えるのも悪くない。 ヒューはゆっくりと潜んでいた天幕から陽光の下に出る。 周囲は突然の状況の変化に戸惑った人々で溢れていた、そんな人々の意識の間隙を縫いながら一際大きな天幕の入り口に立つ。 <弥勒>を身に着けデルフリンガーを片手に天幕を潜ると、そこには数人の軍人に守られた一組の男女が立っていた。 一人は30代の半ばの高い鷲鼻が特徴的な金髪の痩せた男。もう一人はローブを身に纏っているので良くは分からないが、微かに浮かぶラインから女だろうと推察する。 軍人達は……瞬きをせず、動揺もしていない所から察すると、恐らく<指輪>で操られている死人だろう。 胡乱気な目を向けてくる男にヒューは笑いかけると、その口を開いた。 「トリック・オア・トリート。 始めまして、だな。オリヴァー・クロムウェル」 「だ、誰だね君は!」 「俺かい?そうだな名前位は教えておこう、俺はヒュー・スペンサーという者だ。 そして此処に来た理由、いや用事は……」 瞬間、天幕の中にいる全ての瞳がヒューを見失った。 「……こいつの回収、いや奪取だ」 唐突に背後から声が聞こえたとクロムウェルが知覚した時と同じくして己の足元に温かい液体がぶちまけられる。 背後を見ると、ヒューが人形の手を持って笑顔を浮かべていた。 いや、果たしてそれは本当に人形の手なのだろうか。人形のものにしてはいやに生々しくないか、切断面から血のような色の水が出るのは悪趣味ではないだろうか、それにその手に嵌められている<指輪>には見覚えがある。 クロムウェルは嫌な予感を覚えながら恐る恐る己の右手を……否、“右手があったであろう場所を”目の前に持ち上げた。 そこには、クロムウェルの目の前には、彼の栄光を支える<アンドバリの指輪>はおろか、生れ落ちてより共にあったはずの右手までも無くなっていた。 それを理解した瞬間、クロムウェルの意識は耐え難い痛みで沸騰する。 痛みで己を失ったクロムウェルは最早、立っている事すら出来なかった。彼はその場で倒れ伏すと、声にならない絶叫を上げながら血にまみれた絨毯の上を転げ回り、泣きながら傍らにいる女性(クロムウェルの呼びかけによればシェフィールドというらしい)に助けを求める。 周囲にいた軍人達は死体に戻ったのか、全員倒れ伏している。天幕の周囲では突撃してきたウェールズが迫ってきたのか、喧騒が先程よりも大きくなってきた。 そんな喧騒の中、天幕の中はクロムウェルの悲鳴だけが響いている。 既に天幕の中には生者は三人だけだった、即ち。 レコン・キスタの総司令官、オリヴァー・クロムウェル。 クロムウェルの側近らしい謎の女性、シェフィールド。 そして、クロムウェルの右手を切断し、<アンドバリの指輪>を奪い取った“ゴーストステップ”ヒュー・スペンサー。 天幕の入り口を塞いでいるシェフィールドに対してヒューが軽い口調で話しかける。 「さて、ミス・シェフィールドといったか。そこを退いてくれると助かるんだが?」 「生憎とそういう訳にもいきませんわ、先程の魔法で杖が失われた以上、その<指輪>だけがクロムウェル閣下を助ける事が出来るのですから。」 「なるほどね……じゃあ気は進まないが実力で通らせてもらおうか。」 「あら、野蛮な事。魔法も使えないただの女一人にそれはどうかと思いましてよ?」 ヒューの言葉に揶揄混じりで返すシェフィールド。 対するヒューは頭を振ると、シェフィールドに話しかける。 「虚無(ゼロ)の使い魔をただの女として勘定して良いものか疑問だな、そこら辺はどう思っているんだい?ミス・シェフィールド。」 淡々とした、それでいて冷酷なその指摘にシェフィールドはその身を強張らせた、ヒューはそんな彼女の様子を見ると、ゆっくりと右に左に歩きながら話を続ける。 「どうしてばれたのか分からないって顔しているな、簡単な事さ。君は杖が消えた現象を『魔法』と言った……と言う事はだ、君はこういった現象を起こし得る『魔法』に心当たりがあるという事だ。 俺はこの世界に来て以降、様々な『魔法』を見てきた。中には例外もあるだろうが、数万の対象に対して同時に影響を及ぼす様な『魔法』は生憎と心当たりが無い。 ある一つの系統を除いてな。」 ヒューはシェフィールドの正面で足を止めると、デルフリンガーを両手で握って油断なく構える。 対するシェフィールドは、大量出血により足元で静かになりつつあるクロムウェルを蹴り飛ばすと、その身体を覆う外套を取り払う。 中から現れたのは黒を基調とした衣服に身を包んだ黒髪の美女だった。 【やべぇぞ相棒!ミョズニトニルンだ!】 「というと魔道具を扱えるヤツか」 その姿を露にしたシェフィールドを見たデルフリンガーが警告の声を上げる。 デルフリンガーの警告に呼応するかの様に、シェフィールドの額にある使い魔のルーンが輝きを放つ。 するとシェフィールドに呼ばれたのか、10m級のゴーレムが天幕の床を突き破って立ち上がる。 「そうとも、私はその剣の言う通りミョズニトニルンのシェフィールド! 見た所アンタは左手の様だけど、“あの方”の邪魔をするというのならここで潰れてもらう!」 ゴーレムの上で仁王立ちになったシェフィールドは、ヒューと共に潰れた天幕を見下ろしながら声を上げた。 その声に応えたのか、潰れた天幕の一部が切り裂かれてヒューが飛び出してくる。 天幕から脱出したヒューはシェフィールドが呼び出したゴーレムを見て、呆れたように一人ごちる。 「こいつは……、ははっアベルのヤツも大概どうかしてたがお嬢さんも中々だ。」 【相棒、気を付けろよ。アイツが操っているのなら普通のゴーレム以上の能力を持っているはずだ!】 そのデルフリンガーの警告が終わるかどうかというタイミングで、二人の前からゴーレムが“消えた”……否、“跳ねた”。シェフィールドに操られたゴーレムは何の予備動作もなく、その身と同じ高さを跳躍してヒュー達に襲いかかったのだ。 ヒューは舌打ちをしながらもゴーレムの影の下から飛び退く。しかしその直後、降り立ったゴーレムが飛ばした瓦礫で<弥勒>が弾き飛ばされる。 左腕に固定された盾から巨体に見合った剣を抜きいたゴーレムの上で、シェフィールドは嗜虐的な笑みを浮かべてヒューを見下ろしている。 「番犬如きに“あの方”の計画を潰されるとはね。けどまぁ、その命でもって報いは受けてもらうよ。」 「中々、勝手な言い草じゃあないか?どれ位あの方と計画とやらが大切かは分からないが、それが他人の家で暴れて良いっていう理由にはならんだろう。」 【全くだ、迷惑な話だよなぁ】 自分の主人であるルイズも大概迷惑な人物だとヒューは思っていたが、目の前のシェフィールドとその主はスケールが違っていた、もしや他の担い手と使い魔も似たようなものなのだろうか……、ヒューは何となく嫌な気分になった。 「まぁ、いいさ。此処でやる事は変わらないんだ。」 【相棒、手はあるのかい?】 「なにあれだけの図体だ、昔っから“大男総身に知恵はなんとやら”って言うしな、手はいくらでもあるさ。」 【じゃあ、いっちょ大一番といこうか相棒】 「応。最後の大一番だ、派手に行こうじゃないか。」 ヒューとデルフリンガーの会話が続いている間もシェフィールドが操るゴーレムの攻撃は続いていたが、それは悉く避けられていた。しかし、それは当然と言えるのかもしれない、シェフィールドの『魔法』や魔導具があればともかく、杖も魔導具もルイズによって消された為、“ミョズニトニルン”として一番有効な手段=搦め手が使えない。そうなると自然、攻撃自体はゴーレムによる白兵戦を主体にせざるを得ないのだ。 もしかしたら“ガンダールヴ”が唯の少年だったらそれでも何とかなったのかもしれない。だが、現実でシェフィールドの前に立ち塞がったのは、災厄の街から来た“幽霊”……“ゴーストステップ”ヒュー・スペンサーだった。 そうしたゴーレムの攻撃の間隙を縫って大きく距離を取ったヒューはデルフリンガーを左手に持ち替えると、右手親指を噛んだ後、その右手を大きく横に引く。 果たしてシェフィールドは天頂に懸かった陽の光に一瞬煌いた光を見ることが出来ただろうか。しかし、見えたとしてもそれが鋼鉄すら容易く切り裂く恐ろしい死の糸だと誰が思うだろう。 事実、ヒューの行動の意味を理解できなかったシェフィールドは彼に向かって再びゴーレムをけしかけた。 立ち止まったヒューに向かって唐竹割りとも言える一撃をゴーレムが振るう。 対するヒューはその一撃を半身になって回避する。否、回避した直後、<ワイヤードハンズ>を振るう。 振るったヒューの腕すら霞むその斬撃は、ゴーレムの剣をかつてワルキューレを切り裂いた時と同じ様に容易く切り落とす。 「ごとり」という間抜けな音と共に、落ちたゴーレムの剣の剣身を呆然と見たシェフィールドは一体何が起きたのか理解できなかった。それはそうだろう、此方の攻撃が避けられた次の瞬間ゴーレムの武器が破壊されたのだ。 シェフィールドが意識の空白から復帰した時、そこにヒューの姿は無かった。慌てて周囲を探ったが何処にもいない、逃走したのかと安堵の吐息を漏らした後。まんまとしてやられた事に気が付いた彼女がジョゼフに対していかに報告するか、どうやってアルビオンから脱出するか……と考えを巡らせている最中、背後からか細い亡霊の様な声が掛けられる。 「トリック・オア・トリート」 「!」 聞き覚えのある声、聞き覚えのある台詞に振り向こうとした瞬間、シェフィールドの胸から赤を纏った鋼の切っ先が飛び出した。飛び出した切っ先は傷口を広げる為だろう、捻り・抉られる。 自分の身体に何が起こっているのか理解した途端、傷口から灼熱の痛みが迸った。熱い塊とが喉を駆け上がると、シェフィールドの口から真紅の激流が噴き出す。 震える身体に活を入れ背後を見ると、そこには姿を消していたはずのヒューがいた、両手で構えている剣はそのまま己の胸を刺し貫いている。 シェフィールドからデルフリンガーを引き抜いたヒューは、常識を無視する様な体術を駆使してシェフィールドとは反対側のゴーレムの肩にその身を移す。 ゴーレムの肩の上で片膝をついたシェフィールドは、胸元に開いた傷を信じられないような目で見ると、彼方の方に顔を向けて手を差し伸べ……結局はそれも果たせずに、ひどくゆっくりとした動きでゴーレムの上から滑り落ちていった。 その後を追う様にゴーレムから飛び降りたヒューは息絶えたシェフィールドの姿を整えてやると、近くから馬を調達すると戦場からその姿を消した。 それから数時間後、ニューカッスルからかなり離れた森の中にヒューとデルフリンガーの姿があった。 ここまで乗ってきた馬は森から程近い草原に放ってやり、今はヒューとデルフリンガーだけしかいない。 【なあ、あのお嬢ちゃん最後に何か言っていなかったか?】 「さあな、仮に言っていたとしても俺に対する恨み言じゃないのは確かだよ。」 【何でそんな事がわかるんだ?】 「笑っていたからな」 【え?】 「“あの方”の事でも思い出してたんだろう、死に顔が笑っていたからな。」 【そうかー、せめてもの救いってヤツだな。】 「かもな、あのお嬢さんは“あの方”とやらの使い魔になってそれなりに幸せだったんだろうさ。」 深い森は早くも夜の顔を見せ始めている、光は極端に少なく木々の間からは何か人以外の視線を感じる。 痛み止めが切れかかっているのか、昼間とは比べ物にならない痛みが身体を襲う。視界は狭まる上に次第に暗くなっていく。 それでも歩いていると、紐を引きちぎる様な決定的な何かが切れた音が何処からか響く。それと同時にヒューの身体は前に進めなくなった。 いや、正確に言えばヒューは地面に倒れ伏していた。ただ彼はそれを知覚できないだけの話なのだ。 霞む目は欠片も光を拾わない、視界は真っ白な闇で覆いつくされた。 今の今まであった芳醇な森の香りはかつてN◎VAにあった研究施設よりも無味乾燥なモノになり。 纏っていた服の感触もない。いや身体が本当にあるのか、身体の存在を実感できなかった。 辛うじて耳と声は機能している様だ。デルフがさっきからダミ声でがなりたてて来る、出来る事なら最後に聞くのは綺麗な音が良かったが、誰かに看取ってもらうだけでも上等すぎる最後だろう。 【おいっ相棒!聞こえてんのか!】 「うるさいぞデルフ……。 けどまぁ…済まないな、どうやら限界らしい。俺が死んだら伝えた通りにしてくれるか。」 【ああ、分かってる!安心しろ<指輪>は娘っ子に届けるようちゃんと伝えてやる!】 「ところでデルフ、質問があるんだが良いか?」 【ああ、何だ、何が聞きたい?】 「俺は上を向いているか?どんな状態だ?」 【ああ、仰向けにぶったおれてらぁ】 「そうか、死ぬ時位は光を向いていたいからなぁ。 それなら上等な死に方だな。ああ、悪党にしては上等すぎる死に様さ。」 【何言ってんだ!相棒位甘いヤツなんてオレは見たことねぇぞ!マチルダの姐さんだって何だかんだ言いながら助けたし、我儘し放題の娘っ子の世話だってちゃんとしてたろうが!】 「そいつはあれだ、俺が悪党になりきれなかった…だけの話だな。あぁ、畜生耳もダメになってきやがった……。 なぁ、紫城の旦那ぁ俺も上等な死に様を……遂げられそうだ……、ありゃ?おいおい久しぶりじゃないかグリム…まてまてここはハルケギニアだぞ……、ん?ああそういやそうだったなぁ…お前さん神だったっけか……んじゃあまぁ魂ってやつも信じてみるか……、いやいや疑っちゃいないって。そういえばユエや紫乃のヤツは元気にやってるかい?……そうか、もし会う事があったら…そうだな頑張れとでも伝えておいてくれ。 なぁ、デルフ……しってるか?」 会話の最中、聞き覚えのない名前の連中と笑いながら話し始めたヒューが唐突にデルフリンガーに話を振ってくる。 言葉は途切れ、呼吸もおぼつかない……ボロボロの身体でここまで来た男の人生が終わろうとしているのだ、その最後の言葉を聞き逃すまいとデルフリンガーは無い耳を傾け澄ませた。 【何だ?言わなきゃ知っているかどうかなんて分からねぇぞ】 「ひとは…二度死ぬそうだ。生命が終わった時に……一度…。そいつを…覚えている、人間がいなくなる…で……もう一度。 なぁ……デルフ…誰か覚えていて…くれるかな、こんなチンピラと…そう変わらない……木端みたいな男の事を……。」 【お前ぇ馬鹿か!忘れる訳ねぇだろう!娘っ子達やマチルダ姐さん!それに何よりこのデルフリンガー様がいるんだ! お前は死なねぇ!】 「そうか……そいつはうれしい事だな……ああ、本当にうれしい話だ……。デルフ…今日はいい天気だなぁ、本当に……本当に…いい日だ……」 【おい……相棒……応えろよ、なぁおい。】 それっきり、ハルケギニアにおける初めてのフェイト。二人目の“ガンダールヴ”。“ゴーストステップ”ヒュー・スペンサーはデルフリンガーの声に応える事も動く事もなかった。 ヒューがうつ伏せで倒れていた森の一角は、鬱蒼とした森の中で奇跡的に光が差し込む場所だった。そこは、外界の喧騒とは無縁の静寂に包まれている。 2日後、彼等を見つけた少女がヒューを見つけた時、彼の死に顔はただ眠っているのではないかと思った程、穏やに微笑んでいた。 前ページ次ページゴーストステップ・ゼロ
https://w.atwiki.jp/asagaolabo/pages/1885.html
演説 / ENZETSU 【えんぜつ】 いち、に、さん!わあ飛んだ!ぴよんと飛んだ!さあさ、皆さんご一緒に! 演説 / ENZETSU 収録作品 関連リンク ポップンミュージック14 FEVER!で登場した楽曲。担当キャラクターはごくそつくん。 店舗対抗イベント「フィーバー戦士ポップン14」のイベント隠し曲として登場した。 猿の経 / あさき BPM 106-126 5b-10 N-20 H-36 EX-【14】42 ⇒ 【18】41 新難易度 5Buttons NORMAL HYPER EXTRA × 26 42 47 いかにもポップンでしかできないようなジャンルを持ってくるとは、あさきらしいのではないかと思ってしまう独特の雰囲気である。いかにも勢いのある、フィーバーでは異色の1曲でもあり、革新的である。「演説」という、いかにも音楽とは無縁なものを音楽に取り込むところが、あさきワールドを形作っているのだろう。おそらく歌詞は「怖っ!」と思わせるようなものになっており、深読みしたら抜け出せなくなるような意味深な内容だろう。担当キャラの「極卒君」はフィーバーキャラの中ではインパクトが大きいのではないだろうか。アクションや不気味な笑いがいかにも独特の雰囲気を作っているのだろう。 あさき曲の中ではBPMが珍しく低めだが、変拍子で小刻みにBPMが変わるので、BPM120を基準にした速度調整がやりやすいだろう。ハイパーは前半が螺旋状の乱打に同時押しが混じり、後半は左上がりの階段が中心になる。途中の間隔の異なる小階段や縦連打、同時押しのの複合が難所となる。ラストの不規則なリズムは場合によっては殺しになりうる。 EXは後半の2箇所の、同時押しが多く出てくる発狂地帯を抜けることが重要。それ以外は案外簡単でそこでゲージを稼ごう。最後の高密度階段地帯が殺しになるが、同じような譜面のスペースワルツEXと比較すればBPM調節のしやすさで視覚的に見やすいこともあってある意味楽だったりする。以上からHELL14コースの曲では最も簡単な譜面で、しかもLv42にしては(前作のコアダストビートEX並みに)非常に楽な方に位置するかもしれない。 14の店舗対抗イベント・第6話解禁曲の三曲目で、あさきさんの新曲でもあります。キャラの「獄卒くん」がとにかく強烈なインパクトで、初めて見た人で印象に残らない人は居ないのでは無いでしょうか? Hが36と高難度、さらにEXが現時点で存在しないことから、HELLコース行きとの見方が強いです。 BPM変化が激しく、だいだい20回ほど変化する。譜面は序盤の階段と終盤の階段をこなせればそれほど難しいものはない。しかし、終盤の階段というのがあまり目にしないタイプの階段なのでHのLv36というのは難易度的にラメントHと同等かそれ以上かもしれない。 演説というジャンルといい、元ネタは鳥肌実か? N 20 H:36 EX:42HELL14コースの3曲目 BPM変化こそ激しいものの、変化幅が狭く(BPM106~126)、演奏に集中しているとさほど気にはならないだろうまた、HELL14の3曲目に登場するEXだが、序盤はHとさほど変化こそないが、中盤の連続2連打地点と最後の階段が特徴特に最後の階段はスペースワルツEXのあれに匹敵するため、人によっては最後殺しの曲になりうるかもしれない正確な事は言えないが、平均して譜面を見た所、前回あさき曲のラメントEXの方が難易度が高そうに見えたのは僕だけだろうか? 収録作品 AC版 ポップンミュージック14 FEVER!からの全作品 CS版 ポップンミュージック14 FEVER! 関連リンク あさき 楽曲一覧/ポップンミュージック14 FEVER!
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3071.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 二九九 ウェールズ皇太子に死んでほしくはないという思いは、君もルイズと同様だ。 この実直でさわやかな青年は、王族の誇りなどという物のために、こんなところで命を散らしてよい人間ではない。 たとえ恥辱にまみれてでも、生き延びるべきだ――国のため、民のため、そしてアンリエッタ王女のために。 そもそも、ウェールズは最後の突撃を行うなどと言っているが、王党派の軍はまだそこまで追い詰められているわけではないはずだ! いくらかは余力があるのに、自暴自棄の集団自殺としか思えぬ闘いを挑もうとするなど、この理知的な青年には似つかわしくない行いだ。 平静なように見えはするが、父王ジェームズ一世の死が彼に与えた衝撃は大きかったのだろう。 彼の心のなかでは、父の命を奪った敵に対する復讐心と、父のように後方でひっそりと暗殺されてしまう前に戦場に出て、華々しく散ろうという 虚栄心がないまぜになっているに違いない。 君はなんとしてもウェールズを説得しようと心に決める。 しかし、恋人であるアンリエッタ王女のために生きろと言っても無駄なことは、ルイズが証明済みだ。 王女は、同盟締結のためにゲルマニア皇帝のもとへ嫁ごうとしているのだから、ウェールズと彼女が結ばれる望みはほとんどないといってよい。 皇太子に生きようと考え直させるためには、別の事柄を持ち出さねばならない。 死ねばすべてが失われるぞと、恐怖を煽るか(三二六へ)? 残された国民はどうなるのだと言うか(二六五へ)? それとも、王家の血筋を絶やしてはならぬと言うか(二七八へ)? 二六五 「……≪レコン・キスタ≫の輩とて、けだものではない。代々にわたって領民を守り、領地から富を生み出してきた貴族たちだ。 民をいたずらに苦しめるような真似はするまい。ハルケギニア統一の戦争を続けるために重税や労役を課すのは間違いないだろうが、 その程度なら過去のアルビオン王たちもやってきたことだ」と言うウェールズだが、 その表情は苦しげなものに変化している。 ウェールズは、≪レコン・キスタ≫が平民の生命や財産など歯牙にもかけぬ連中であることを、君以上に知っているのだ。 傭兵どもの焼き討ちに遭い、女子供まで皆殺しにされた村を見たことも、一度や二度ではあるまい。 君がそのことを指摘すると、ウェールズはうつむいて 「なんにせよ、我らにもはや勝機はないのだ。民を、国土を敵の手から守ろうという貴族の義務も果たせぬ。ならば、王家に生まれた者としての 義務だけでも果たさねばなるまい。王族にふさわしい勇気と名誉を示すという義務だ」と小さな声でつぶやく。 「トリステインに亡命する以外にも、叛徒どもから逃れて落ち延びる方法はある。しかし、生き恥をさらすわけにはいかぬのだ。滅びゆく王家の最後の者として!」 話が振り出しに戻ってしまっため、君は小さく溜息をつく。 この、名誉や矜持によってがんじがらめになってしまった青年を説き伏せるには、理屈ではなく感情に訴えるほかないようだ。 国が滅びゆくさまを見るのが怖いのだろうと挑発してみるか(三五へ)? 無礼は承知で胸倉を掴み上げ、なにが名誉だと怒鳴りつけるか(九三へ)? 三五 君は軽蔑したように鼻を鳴らすと、冷たく言い放つ。 名誉、勇気、義務ときれい事を並べ立ててはいるが、現実逃避のために死のうとしている者に、勇気も名誉もあるものか、と。 君の不遜な物言いに、ルイズとギーシュはそろって息を呑む。 ウェールズが険しい表情で 「それはどういう意味だ、使い魔殿」と尋ねるので、 君は、皇太子は≪レコン・キスタ≫によって民が殺され、国土が破壊されていくさまをその眼で見ることに耐えられぬので、部下を巻き添えに 自殺しようとしているだけの臆病者だ、と言ってやる。 ウェールズはその端正な顔を真っ赤にして、 「ぶ、無礼な! いかに命の恩人とはいえ、今の言葉は聞き捨てならぬ! 取り消したまえ!」と叫ぶ。 「あ、あ、あんた、殿下に、な、なんてこと言うのよ!? 謝って、取り消して!」 ルイズが立ち上がり、声を震わせて君を怒鳴りつける。 ギーシュは寝台から腰を浮かせて、おろおろと君たちの顔を見回す。 君は彼らに構わず言葉を続け、勇気や矜持という美名のもとに死のうとするお前たちと違って、平民たちは家族のため、愛する者のために、 屈辱と苦痛にまみれながらも生きねばならぬのだ、と言う。 さらに、苦しむ民を見捨てて、自分たちだけ『名誉の戦死』を遂げて楽になろうとする者など腰抜けだ、貴族どころか男と呼ぶにも値せぬ弱虫だ、と罵る。 君の言葉に、皇太子の表情は怒りから狼狽のそれへと転じる。 「ち、違う! 私は、私は……」 君は相手が動揺した機をのがさず、たたみかけるように言葉を浴びせる。 本当に違うというのならば行動で示してみろ、勇気を示したいのならば生きて苦しめ、絶望を味わい恐怖に震えながら生き延びろ、と。 戸惑うウェールズが、 「しかし、多くの部下たちを死なせて、私だけがのうのうと生きるわけには……」と言うのをさえぎり、 死んでいった者たちにすまぬと思うならば、彼らのことを毎日思い出すことこそがお前にできる手向けなのだ、と語る。 それに、ウェールズが生きている限り≪レコン・キスタ≫は王家の影に脅え続けることになり、他国に攻め入る余裕が失われ、離反者すら現れるかもしれぬのだ。 君は最後に、ウェールズの青く澄んだ瞳をじっと見つめて、国のため、民のため、お前は絶対に死んではならぬ身なのだと告げ、話を終える。九三へ。 九三 ルイズ、ギーシュ、そして君の三人は、うつむいて沈思黙考するウェールズ皇太子を見つめている。 三人とも緊張した面持ちであり、誰も言葉を発しようとはしない。 数分ののち、ウェールズは重々しく口を開き、 「わかった。使い魔殿の言葉に従ってみよう。一日でも長く生き延び、≪レコン・キスタ≫の卑劣漢どもを翻弄してくれよう。父上が存命ならば、 けっして許しはしなかっただろうがね」と言う。 その言葉を耳にし、ルイズの顔がぱっと輝く。 「殿下……!」 「ラ・ヴァリエール嬢。アンリエッタには、こう伝えてくれたまえ。たとえ卑怯者のそしりを受けようとも、私は生きる。生きてこの『白の国』で そなたの幸せを願い続ける、と」 そう語るウェールズの表情は悲痛なものだ。 本当ならば『生きて添い遂げると』言いたいところだろうが、彼の想い人は国を守るために、意に沿わぬ政略結婚を強いられているのだ。 やがて、ウェールズは気をとりおなしたように微笑むと、君に向かって、 「さて、使い魔殿。先ほどの言葉を取り消していただけるかな?」と言うので、 君はもう一度アルビオンに来て、彼の行いを見届けてから発言を取り消し謝罪をしよう、と返す。 青年は無邪気な笑顔を浮かべ、 「それはいい! 君の謝罪を聞くときまで、私は死ぬに死ねぬわけだ」と君の肩を叩く。 「……昨日の昼に君たちも通った、あの地下通路を使えば脱出はたやすい。それが駄目でも、温存している船と風石がある。 城を抜けたあとは、少人数の集団に分かれて遊撃戦を挑むことになろう」 ガラスの杯にワインを注ぎながら、ウェールズはこれからの展望を語る。 君とギーシュは杯を片手に皇太子の話に聞き入っているが、ルイズは早々と寝台に倒れこみ、すやすやと寝息を立てている。 今日は――厳密には昨日だが――多くの出来事が矢継ぎ早に彼女を襲った。 傭兵どもとの闘い、ウェールズ皇太子との出会い、君を送還する手段が失われたこと、婚約者との再会と裏切り、明らかになったウェールズとアンリエッタの関係、 ウェールズと君の口論……。 さんざん張り詰めていた緊張の糸が切れた今、眠りにおちてしまうのも無理はない。 「あのような隠れ家は君たちが見たほかにもいくつかあるし、食糧や秘薬のたくわえも数ヶ月ぶんはあるはずだ。この命が続く限り、奴らの悪だくみを邪魔し続けてやるさ。 あの『フッド卿』のように森に潜んで……ああ、君は異国人だからフッド卿の伝説を知らないのだな。平民たちのあいだで人気のある物語で、 悪辣な領主に公然と反旗を翻した…」 やがてギーシュも眠気に耐えられなくなり、挨拶をすると部屋に引き揚げていくが、君とウェールズはすっかり意気投合したため、会話をさらに続ける。 話がはずむので、君は七大蛇について話を持っていくことに決める。一八二へ。 一八二 「あの化け物の噂は耳にしていた。≪レコン・キスタ≫の首魁であるオリヴァー・クロムウェルが、誰も見たことのない幻獣を使い魔として召喚したという噂だ――この眼で見るまでは、信じられなかったが」 ウェールズによれば、その怪物に関する噂は一月ほど前から反乱軍のあいだでささやかれていたらしいが、それを直接に眼にしたのは一握りの ≪レコン・キスタ≫幹部だけであるらしい。 クロムウェルはさまざまな能力をもつその怪物を操って、あるときは宮殿まで忍び込んだ暗殺者を返り討ちにし、またあるときは自身に反抗的な 部下をむごたらしく抹殺したのだという。 「クロムウェルは一介の司教にすぎなかった。貴族の生まれですらない。しかし、内乱が始まると死者をよみがえらせるなどの怪しげな力を披露してみせ、 たちまち≪レコン・キスタ≫の頭領にまで登りつめたのだ。奴は自らの力を、伝説の失われた系統≪虚無≫だと称しているそうだが、 それはにわかには信じられない――もっとも、≪虚無≫がどのようなものなのかを知る者もいないのだがね。あの醜い大蛇も、 伝説の≪虚無≫の使い魔などではないのだろう?君はあれのことを知っているようだが」 君はうなずき、七大蛇について知っていることをすべて話す。 マンパンの大魔法使いによって作り出された最強の下僕であること、そのすべてが君によって倒されたこと、そしてそれが、理由はわからぬが クロムウェルの≪使い魔≫としてよみがえったことを。 七大蛇をよみがえらせたのもクロムウェルの≪虚無≫の力だというのだろうか? そうだとするならば、死体も残さず打ち滅ぼされたものが大半の怪物どもを、どうやってこの世界に呼び出したのだろうか? それに、君がルイズに召喚されたのは二十日ほど前のことだが、七大蛇がアルビオンに現れたのは一月以上は前のことだという。 君が最後の大蛇を殺したのは召喚される前日のことなのだから、計算が合わぬことになる! 君の疑問は深まるばかりだ。 スナタの森の魔女フェネストラによって、水晶玉に閉じ込められたままであろう日輪大蛇を除けば、生き残りの大蛇は土、風、時の三匹のはずだ。 彼らとふたたび遭遇したときのため、三匹の弱点をウェールズに説明すると、彼はしきりに助言に対する礼を述べる。 強運点を原点まで回復させよ。 その後も君たちの会話は途切れることなく、アルビオン皇太子と、アナランドの平民出身の魔法使い――ふたりの語らいは、東の空が白むまで続く。五二〇へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2111.html
西暦1868年のある雨の日のことだった 旅行に出かけた帰りのとある貴族の一家を乗せた馬車が、 折からの雨で崩れやすくなっていた崖際の道を通った際に崖下へ落ちた 生まれたばかりの赤ん坊は無事だったものの、 一家の父親は全身に怪我を負い、……そして、母親の姿は、何処にも無かった 馬車の落ちたすぐ傍には、豪雨によって増水した川があったことから、 母親は馬車から放り出され川に流されてしまったのだろう、と 生存は絶望的だし、遺体も見つからないだろうと、判断された ……おそらく、父親を助けた男女がもう少し早くそこを訪れていれば、 銀色の鏡が、馬車の中から、母親だけを連れ去っていく奇怪な光景を目にしていただろう 母を亡くしたのは、僕がまだ六つになったばかりの頃だった 幼かった僕は、母を求めて泣いては、両親や召使達を困らせていた そんな中で執事のジャン爺がこう言った 「ジャック様、使い魔召喚の儀を行われてみればいかがでしょう?」 自分の運命に従うものを召喚するという、使い魔召喚の儀式 自分が求めるものを呼び出すという、儀式だった 幼かった僕は何も考えずに、彼の意見に飛びついた おそらく、彼としてはここで僕が失敗した際には 『母上を求めて泣いているから、使い魔も来てくれないのでしょう 母上に笑われてしまいますよ。涙を拭いて、立派なメイジになれるよう 努力をお続けなさいませ』とでも言うつもりだったに違いなかっただろう そんなこととは知らない僕は、たどたどしく呪文を紡いだ 「いつつのちからをつかさどりしペンタゴンよ、 われのうんめいにしたがいし、……つかいまを、しょうかんせよ」 呪文を紡ぐ中で、僕はちらりと考えた 使い魔よりも、『母上』が欲しいな、と そこに現れた銀の鏡は、僕の願いを汲み取ってくれたらしかった 鏡から現れたのは、大怪我を負った一人の女性だった 僕とジャン爺は慌てて、彼女の手当てを行った 「私の息子……私の息子は、どこ?」と、うなされる中で、彼女は呟き続けた その言葉を聞くたびに僕の心は打ちのめされていた 自らが『母親』を求める余り、名も知らぬものから 『母親』を奪い取ってしまったのだ、と 目を覚ました彼女は、自分の名前と出身地を告げた 聞き覚えの無い地名であり、僕は首を傾げた ジャン爺も、そんな場所は知らないと言った 彼女は自分の住む場所には魔法が存在しない、 と言ったので僕は心の底から驚いた 時々館にやってくる吟遊詩人から、風の噂ではこことは違う世界が存在し、 そこには魔法がないのだという話を聞いていたことはあったが、 まさか本当に、そんな世界が存在するとは思わなかったのだ 父に事情を説明すると、しばらく悩んでいたようだったが、 とうとう、彼女を我が家で僕専用の召使として迎え入れたようだった 周りには、彼女はさる貴族の庶子であったが魔法が使えない しかし、礼儀作法に関してはきちんとした教育を受けていたため、 僕に礼儀作法を教える家庭教師として雇われたのだ、と嘘をついた 事実、彼女は元居た場所で上流階級の人間だったらしく、物腰は洗練されていた 母を亡くしてから沈んでいた屋敷にようやく本当の笑顔が戻ったのは 一重に、彼女の存在があったからだと言えよう こうして、僕の中にはある大きな目標が出来た 『彼女を、元の世界に帰し、息子と再会させること』 新しい母のような存在になった彼女と別れることは寂しいが、 母を失う悲しみを、彼女の息子に味わわせてしまったのは、 僕が背負った最大の罪だと思ったからだった 彼女と出会ってから、二十年の月日が過ぎた 父を亡くした後、魔法衛士隊に入り、努力の末にグリフォン隊の隊長にまでなった 僕の下に、ある日一人の女が現れた アルビオンで暗躍している『レコン・キスタ』の一員であるというその女は、 僕を『レコン・キスタ』に勧誘しに来たという 「馬鹿馬鹿しい。僕が王家を裏切ると思うのかい? そんなことは、しないよ。……『紳士のすることではない』からね!」 彼女がよく口にする、彼女の夫の口癖を叫びながら 僕はその女に杖を向け魔法を放った 風の刃がその女を切り裂いた……と思ったが、 そこに残ったのは一つの小さな魔法人形だった 「……我々が聖地を手に入れれば」 いつの間にか後ろに立っていた女が僕の耳元で囁く 「『門』の向こうへ……『彼女』の国へ行くことができるかもしれませんよ?」 その言葉に身を震わせた僕は、ゆっくりと女の方を振り向く 「……本当、だろうな」 「ええ……詳しくは、ご協力くださればお教えいたしましょう ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵」 彼女を元の世界へ帰すことが、できる 確かに、聖地にはその可能性があることは知っていた だから僕は、『ミョズニトニルン』と名乗るその女の誘いに乗った レコン・キスタに入ったことは、誰にも知らせなかった ただ密かに時期を待ち……そして、その時がやってきた 虚無の担い手の可能性を持ち、伝説の使い魔『ガンダールヴ』を召喚した少女、 僕の婚約者、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 姫様の任務を受け、アルビオンへ行くことになった彼女に僕は同行することになった 『魔法衛士隊グリフォン隊隊長:閃光のワルド子爵』の仮面を被り、 『王家に仇なすレコン・キスタの一員:ワルド』の本性を隠して、 僕は幼い婚約者と久しぶりに顔を合わせ、その際に彼と出会ったのだ 黒い髪にがっしりとした体つきをし、体全体からほんのわずかながら 光を放っているような、一見してただの平民でないと分かる、彼 必死で、体中から吹き出そうになる脂汗を抑える 「彼らを紹介してくれないか、ルイズ」 「あ、えっと、ギーシュ・ド・グラモンと使い魔の『ジョジョ』です」 「やあ、君がルイズの使い魔かい、人とは思わなかったな しかし、ジョジョ、というのは、変わった名前だね」 笑顔の仮面を貼り付けたままで、彼に問いかける 「仇名のようなものです。本当の名は『ジョナサン・ジョースター』と言います」 ああ、やはりそうだった、と思った だって彼のその瞳は、彼女と同じ、真っ直ぐで、強い意志を秘めた瞳をしていたから 「君は、伝説の使い魔、ガンダールヴなのだろう? 一つ、手合わせ願えないかね?」 ラ・ロシェールの宿屋『女神の杵亭』の中庭で、決闘を申し込んだ 杖と剣で、ただひたすらに打ち合う どうやら修羅場を幾つか潜っているらしく、剣の使い方の上手さは ガンダールヴの能力によるものだけとは思えなかった 「もう二人ともいい加減にしなさいよ!」 立ち会っていたルイズの一声で、彼は剣を納め、僕に背を向けた 「待ちたまえ、ジョジョ、使い魔くん 何故剣を納め、僕に背を向けた?僕がもし敵だったとしたら、 その君の背中に魔法を打ち込むかもしれないぞ?」 杖を構えたまま、そう言う僕に振り向き、彼はこともなげに答えた 「……あなたが、そんな『紳士のすることではない』ようなことを するような人に見えなかったからです」 友人には考えが甘いって言われましたけど、と苦笑していた 僕の心が乱れるのが分かる 僕は何をやっている?こんなことをして彼女が喜ぶわけがない こんなのは、『紳士のすることではない』 ルイズ達と城へ辿り着き、ウェールズ皇太子と会談し、目的の手紙を手に入れた後 僕は、少し外の空気を吸ってくる、と外へ出た 「……ワルド子爵?どうしたんですか?」 外を歩いていた僕を見つけた彼が驚いて声をかけてきた 「なあに、ちょっとした散歩だよ。それより、眠らなくていいのかね?」 「……何だか、眠れないんです。皇太子の言うことは痛いほどよく分かります。 愛する人を守るためにだったら、自分くらい、あっさり犠牲に出来ます」 「そうだね。僕もだよ」 不思議そうに首を傾げた彼に向かって僕は告げる 「なあ、使い魔くん……いいや、ジョナサン・ジョースター。 この任務が無事に終わったら、一度僕の屋敷へ行ってくれないか」 「え、何故ですか、子爵?」 その問いには答えず、僕は口笛を吹いた よく訓練された僕のグリフォンが僕の目の前に現れる 「答えは、僕が戻ってきたら、お教えしよう! だが、戻って来なくとも、行ってくれたまえ、絶対にだ!」 グリフォンに跨ると、呆気にとられたままの彼を残し、空に飛び立った 「クロムウェル様」 アルビオン王立軍をなめきっていたクロムウェルは、 あの女を連れて王城近くまで来ていた 「おお、ワルドくんではないか!どうしたのかね?」 「はい、求めていたものを手に入れましたので、 クロムウェル様にご覧に入れようと思いまして」 「おお!それは一体何かね?手紙か?よもや皇太子の命かね?」 うきうきとしている彼に少しずつ近づく あと、ほんの数サント 「いえ、取り戻したという方がいいでしょうね」 「何と?」 「取り戻したのは……我が誇りだよ、クロムウェル」 「まさか、貴様ァ!」 横に居た女が、僕が呪文を唱えたことに気づいたようだったが 『バヴォアッ』 既に時遅く、風の刃がクロムウェルの首を床に転がしていた 「く……ッ!総員!出よ!ワルドが裏切った!!」 女の声が連絡管を通じて船中に響き渡る 僕はクロムウェルの首を掴むと一目散に逃げ出した 立ち向かって勝てるとは、到底思えなかった 刃が、魔法が、銃弾が、矢が僕を傷つける 途中で片腕をもがれたが走り続けて、 どうにかグリフォンに跨った所で僕の記憶は途絶えた 「ヴァリエール様!ジャック様が目を開けられました!」 「ワルド様、目を覚ましたのね、よかった!」 泣きながら飛びついてきたルイズに首を傾げる 「……ルイズ。僕は、一体?」 「覚えていないの?……ワルド様は、クロムウェルの首を持って、 ニューカッスル城へ帰って来られて……それから」 ルイズは一旦目を伏せ、再び、僕の目を見つめて言葉を続けた 「ご自分が、レコン・キスタに所属していたことを、 ジェームズ1世陛下や、ウェールズ様、それから私たちの前でお告げになりました」 「ああ……そうだったね。……それで、ここは?」 「……ワルド領の、お屋敷です」 「何……?」 驚きのあまり思わず身を起こそうとする 不思議なことに、あれだけ大怪我を負っていたのに痛みは少なかった 「……姫様からの伝言をお伝えするわ」 ルイズの口から告げられたのは、王家への裏切りは重罪ではあるが、 クロムウェルを打ち倒した功績は大きい よって、魔法衛士隊からの罷免、並びに領地の一部没収をして 今回の件は処理するということであった 「姫様はおっしゃったわ。裏切り者である貴方を重用したのも、 それに、私を勝手にアルビオンへ送ったのも自分だ、と だから、この件の責任を全てあなたに被せるわけにはいかない、と」 「……どこまでも、甘いお方だ、姫殿下は……」 「ワルド様!……教えて。どうして、貴方は王家を裏切ろうとしたの? 貴方、そんな人じゃなかったはずだわ……」 目に涙を溜めたルイズに聞かれて、僕は今までの一部始終を伝えることを決意した 「……ルイズ。君の使い魔も……ジョジョも、一緒かい?」 「え、ええ。別の部屋にいるけれど」 「よかった。……ジャン爺。『彼女』を呼んでくれたまえ」 「『彼女』……。はい、承知しました」 全てを伝えた後、彼女と彼は、驚いたように互いを見つめていた 言葉も出ないようだった 「……最初に会った時、我が目を疑いました」 少し白髪の混じった髪を困ったように揺らしながら彼女は口を開いた 「若い頃の夫に、とてもよく似ていて…… 何より、あの子と同じ名前でしたから……」 彼女が、自分より背の高い彼の頬をそっと撫でる 「大きくなったわね、ジョナサン」 「ああ……!」 目を見開いていた彼が優しく彼女を抱きしめた 「母さん……ッ!」 「おお、ジョジョ、私のジョナサン……!」 強く抱き合う親子の姿を見て、僕は思わず微笑んでいた 「よかった……メアリー、本当に、よかった……」」 この後、虚無の担い手であるルイズの傍らには、二人の『紳士』が 控えていたことが記録には残っている その内一人は、彼女の夫であり、『閃光の紳士』『隻腕の護り手』とも呼ばれる ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵であるが、 もう一人の男性『太陽の紳士』と呼ばれる男性についての記述は、 彼らが聖地に到達したとされている日から、ぱったり途絶えている 民間伝承においては、『太陽の紳士』は伝説の使い魔『ガンダールヴ』であり、 聖地にある『扉』から、一人の女性を伴い故郷へ帰ったのだと言われている なお、ルイズとワルドは後に一男一女に恵まれ、子供達は彼女と彼の恩人の名をもらったという 息子の名は『ジョナサン』娘の名は『メアリー』
https://w.atwiki.jp/monaring/pages/521.html
演説 4赤 ソーサリー あなたのコントロールする赤のクリーチャー1体を対象とする、そのクリーチャーは +2/+1 の修正を得る。 33版の 262のカード。一瞬だけ話題を呼んだカード… そのカードパワーのあまりの低さについてだ。 5マナで+2/+1の修正を受ける事ができるが、実質は1~2マナの効果。 しかも対象に出来るクリーチャーも赤のものに限定されており使いづらさマックスです。 これなら≪オークの軍旗≫のようなコントロールしているクリーチャーすべてに影響するエンチャントでも損はないはず。
https://w.atwiki.jp/chaina_battle/pages/174.html
反軍演説(はんぐんえんぜつ)は、1940年(昭和15年)2月2日に帝国議会の衆議院で斎藤隆夫が行った演説。日中戦争に対する根本的な疑問と批判を提起して、演説した。 経緯 演説 斎藤によれば、演説の要点は以下の通りである ref name= hangun-kaiko 『回顧七十年』「国家総動員法案、質問演説」より。以下のカギ括弧内引用は断りが無い限りこのページからのものである。 第一は、近衛声明なるものは事変処理の最善を尽したるものであるかどうか 第二は、いわゆる東亜新秩序建設の内容は如何なるものであるか 第三は、世界における戦争の歴史に徴し、東洋の平和より延(ひ)いて世界の平和が得らるべきものであるか 第四は、近く現われんとする支那新政権に対する数種の疑問 第五は、事変以来政府の責任を論じて現内閣に対する警告等 「演説中小会派より二、三の野次が現われたれども、その他は静粛にして時々拍手が起こった」と、演説中の議場は静かであったことを記している ref name= hangun-onsei しかし音声では、「唯徒に聖戦の美名に隠れて、国民的犠牲を閑却し、曰く国際正義、曰く道義外交、曰く共存共栄、曰く世界の平和、斯くの如き雲を掴むような文字を列べ立てて、そうして千載一遇の機会を逸し、国家百年の大計を誤るようなことかありましたならば」の直後の罵声・怒号で、斎藤の演説がかき消された様子が分かる。。そして、「しかし、議場には何となく不安の空気が漂うているように感ぜられた」と付け加えている。 演説当日の具体的様子として、「時局同志会や社民党(社大党の誤り、前身政党は社会民衆党)から私の演説は聖戦の目的を冒涜するものであるという意味の声明を発するようである」と記している。 また、衆議院議長で、身内の立憲民政党の小山松寿により、軍部批判にあたる箇所を削除された。 除名 反軍演説の翌日の院内の様子を、斎藤はこのように描写する。 Template quotation? 後日、斎藤は懲罰委員会に出席することとなるが、その委員会では、 Template quotation? その結果、 Template quotation? とその有様を紹介している。 そして3月7日の本会にて除名の可否の投票が行われた。投票結果は以下の通り。 賛成 296名 浅沼稲次郎・河上丈太郎・河野密・三輪寿壮・三宅正一など 空票 144名 棄権(登院) 121名 尾崎行雄・鳩山一郎・鈴木文治・犬養健・若宮貞夫など 欠席(不登院) 23名 西尾末広・安部磯雄・片山哲・水谷長三郎など 反対 7名 牧野良三・名川侃市・芦田均・宮脇長吉・丸山弁三郎(政友会久原派)・岡崎久次郎(民政党)・北浦圭太郎(第一議員倶楽部) これにより斎藤は衆議院議員を除名された。 斎藤は除名された後、次の漢詩を詠んでいる。 Template quotation? なお、反軍演説がなぜ衆議院議員を除名されるという結果まで引きおこしたかについて、斎藤は以下を挙げて説明をしている ref name= jomei 『回顧七十年』「議員を除名される」。 第一は、政府の無能 第二は、議長が速記録を削除したこと 第三は、政党の意気地なきこと 除名後の翼賛選挙 衆議院議員除名後には総選挙の延期などがなされた。そして1942年(昭和17年)総選挙では、軍部を始めとする選挙妨害をはねのけ、翼賛選挙で非推薦ながら兵庫県5区から最高点で再当選を果たし、見事衆議院議員に返り咲く。 斎藤は再選に関して、次のように総括している。 Template quotation? 逸話 斎藤は「支那事変処理に関する質問演説」(反軍演説)の練習を鎌倉の海岸で何度も行い、そのためによく声をからしていた。これを心配した斎藤の妻乙女は、海岸へ練習をしに行く斎藤に手製のキャラメルを持たせた。この甲斐あって斎藤は以後、声をからすことなく練習に没頭でき、最終的には演説全文を暗記するまでになった。もちろん当日も原稿を見ることなく演説を果たした。 脚注 関連項目 小山松寿 日中戦争 除名 斎藤隆夫 粛軍演説 外部リンク 「国務大臣の演説に対する斎藤君の質疑」(「支那事変処理に関する質問演説」・反軍演説の全文。議事録から削除された部分も掲載されている) 出典 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』_2008年11月1日 (土) 08 15。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/39029.html
だいえんぜつ【登録タグ IA VOCALOID jon しとお た 曲】 作詞:jon-YAKITORY 作曲:jon-YAKITORY 編曲:jon-YAKITORY 唄:IA 曲紹介 たった一人でも叫べ。 jon-YAKITORY氏の34作目。 Illustration:しとお Mix Mastering:rosso.(muLogic Studio Tokyo) 歌詞 (配布歌詞より転載) 国民の皆々様 今じゃ溜息まみれの世の中 地球温暖化の中 二酸化炭素吐かなきゃやってらんねぇ そんな時代を私が 1つ残らず変えてみせます どうか私と歩き出して下さい ここが一ページ目となるのさ よく聞け たった一人 叫ぶのだ 大演説 ここから変えるのだ全部 たった独り 生きるのだ 大演説 たとえこの身朽ち果てても突き進むのだ 悩む時 病める時 人は求む 慰めよりも希望ある言葉 ここでショータイム 我らが御大 偶像の崇拝? 心に本体 全ての弱者を救い出す そして明日へと導き出す 拳振り上げ鼓舞しろ 指し示すその先へ奇跡へと続け よく聞け たった一人 叫ぶのだ 大演説 ここから変えるのだ全部 たった独り かき鳴らせ 大演説 たとえ嘲笑われても明日を見据えるのだ よく聞け たった一人 叫ぶのだ 大演説 ここから変えるのだ全部 たった独り 歩き出せ大演説 たとえ殺されても たった一人 叫ぶのだ 大演説 ここから変えるのだ全部 たった独り 生きるのだ 大演説 たとえこの身朽ち果てても突き進むのだ コメント 名前 コメント